2023年10月5日の放送は、金秋戦の予選、10月12日は決勝戦でした!
さっそく結果発表~!
▼毎週の結果まとめ記事
プレバト俳句 2023年金秋戦予選 お題「母の背中」
「母」は、俳句に入れると良い句を作れた気になる、究極の凡人ワード。
「母の背中」を題材にした句は、似たような発想になりやすく、お題が発表されると見守り人の永世名人からも「うわ~」「これは難しい」との声が!
果たして凡人を乗り越えられたのでしょうか!?
プレバト俳句 2023年金秋戦予選 順位
決勝進出は第4位まで!
予選 第1位 決勝進出!
特待生4級 春風亭昇吉さん
乳房切除す 母よ芒の 先に絮
東大出身の春風亭昇吉さん。
立川志らくさんとの因縁の落語家対決を制し、見事1位で予選通過です!
夏井先生の評価
もう詠いだしにハッとしますね。
「乳房切除す」は自分自身の事とも読めますが、「母よ」と来るので、お母さんが手術をしたんだ、と読むのが妥当ですね。出来事を淡々と詠んでいる。「乳房切除す」で一回切れ、ススキ映像にポーンと跳ぶ。ススキの先にくっついている絮が、風に吹かれて飛んでいくか行かないか、という光景が見えます。
また「背中」とは書いていないのですが、この語順で読んでいくと読み手は、お母さんが背中を向け、向こうにあるススキを見ているのではないか、とそういう映像が脳の中にちゃんと出てくるんですね。
これは技術としてとても巧い。さらに、お母さんの心情が後半の映像に乗っかってくるんです。
お母さんはススキを見つめて、何を感じているんだろう。枯れていくススキに自分を投影しているんだろうか。それとも種子である「絮」に、自分の子どもたちに命を繋ぐという思いを持っているんだろうか。それを、ちゃんと映像で伝えているんです。
もうひとつ褒めます。
「切除す」で切れる。「母よ」で切れる。最後名詞「絮」でも切れるんですよ。
・三段切れ
・上五字余り
難易度の高い構成なんだけど、この句の内容にとって、この形が一番ぴったりだと。よく勇気をもって挑んだ。これは手放しで褒めます。
夏井先生の解説に「おお~…!」と感嘆の声が上がりました!
みなさんの表情もしみじみして、すばらしい解説でした(´;ω;`)
浜ちゃんまで「はぁ~」と唸らせましたよ!
観てない人は、この解説だけでもTVerでみてほしい!予選の放送回は10月12日の18:59まで無料で観られます!
予選 第2位 決勝進出!
名人7段 森口瑤子さん
黒ぶどう甘やか 母の背にほくろ
森口瑤子さんいわく、お母さんはまったく色気や女っ気がない。でも背中にあるほくろが子どもながらに、そのほくろを綺麗だと感じた。その光景と、ぶどうの艶やかさがリンクして作ったそうです。
夏井先生の評価
直接的に「母の背」と使っているのに凡人にならない。こんな風にも詠めるのね。お手本のような句じゃないでしょうか。
下五に「ほくろ」と持ってくることで上五の「黒」と響きあうことも分かってやっているし、大事なのは「甘やか」をこの位置に持ってきたこと。
当然「黒ぶどう」が「甘やか」だと言っているのだけど、母の背にあるほくろにも、どこか甘やかさを感じている。これが巧い。
少しだけ表記の効果の問題になりますが…
黒葡萄あまやか 母の背にほくろ
「このように表記した方が、この句にとっては得かな、と思いました」との夏井先生。「ですが、これはとてもいい素材でしたよ!」という評価でした!
予選 第3位 決勝進出!
特待生3級 犬山紙子さん
発熱の母 月光の車椅子
犬山紙子さんはお母さんの介護をしていたことがあるそうです。
そのお母さんを病院に連れていくとき、月の青い光が癒してくれているような感じを詠んだそうです!
夏井先生の評価
お母さんを救急病院に連れて行っている場面かな、と読めます。そして「月光」「熱」と来ると、熱を冷ますかのように冷ややかな月光が包んでくれているのかな。
最後に「車椅子」が出てくるので、この状況の映像がしっかり見えてくる。
そういう点で、この句はとても良いのだが、今回順位をつけないとなった時に、お題の「背」というテーマ性でこれを3位にしなければならなかった。
1位から3位は甲乙付けがたかったそうです!
予選 第4位 決勝進出!
特待生3級 森迫永依さん
薄月夜 母の電卓 スタッカート
「スタッカート」は音楽用語。トットッ、と音を弾くように演奏することを表します。
夏井先生の評価
中七下五の表現が良いですね~。読んだ瞬間、家計簿かな?商売の経理かな?と思いました。
「スタッカート」を持ってくることで、電卓を打つ勢いとか明るさのイメージが残るじゃないですか。
そうなった時に、ジュニアさんが指摘したように「薄月夜」から「電卓」に来ると、負のイメージに着地するのかな?と思ってしまう。この季語だと、それぞれがかすかに損してしまう。
星月夜 母の電卓 スタッカート
または
星流る 母の電卓 スタッカート
同じ月夜でも、こんなに句のイメージが変わるんですね!
ステキな添削でした!
予選 第5位
名人8段 中田喜子さん
母の背は硬く 娘を待つ秋夜
若かりし頃、遊びに行った自分を黙って待つお母さんの事を詠んだそうです。
この句に対してジュニアさん「硬く」という風にはなかなか詠めない(表現できない)ですね~。そして梅沢さんは、非常に良い句だけど、中田さんの心情を詠んでいるようで、第3者が見ている句にも読めてしまう。との指摘。
夏井先生の評価
もう永世名人たちエラい!おっしゃる通り。おふたりの言っていること合わせ技ですべて解説できました。
良いところはやっぱり「硬い」ですね。この心情を「硬い」と表現できるのは素晴らしい。
ですが「娘」にしてしまうと、第3者の視点になってしまう。
母の背は硬し 吾を待つ秋夜の背
永世名人の梅沢さん、ジュニアさんに対し「学んでるんだ、この人たち。ささやかな感動を覚えます」とのお褒めの言葉がでました!
予選 第6位
特待生1級 馬場典子さん
秋湿り 添い寝の母の 生返事
夏井先生の評価
書こうとしていることはわかりますし、共感も持ちますよね。でも季語の問題だと思います。(梅沢さんも指摘!)
自分の寂しい気持ちを「秋湿り」に託そうとしたのではないかと。ただ、その気分と「生返事」が近い気もするんです。
季語を変えると「添い寝」と書かなくても分かります。
秋の蚊帳 母の背中の 生返事
「気分と近い」というのは、同じような印象を持つ言葉を十七音に入れるのがもったいない、というような感じでしょうか?
近いことで相乗効果が生まれるなら良いかと思いますが、今回は他の季語が良いのでは?という夏井先生の判断でした!
予選 第7位
名人9段 キスマイ千賀健永さん
手羽を煮る 小さき背中や 秋彼岸
母と喧嘩した後、母は料理をしている。その姿が小さく見えた、という光景を詠んだそうです。
下五の「秋彼岸」は、寂しい気持ちや、今生きているうちに母を大切にしなければ、という思いを季語に託したとの事。
しかし夏井先生いわく、この句には致命的なミスがあるそうです!
みなさん、わかりますか??
夏井先生の評価
いや~、そういう事だったのかと今思いましたね。まあ「年を取っていく母の背中が小さく見えた」という表現は、掃いて捨てるほどある!(強めの口調でw)
「小さき背中や」は(凡人的発想だと)危ないと思ってほしい。
また、ジュニアさんが指摘したように「秋彼岸」は、亡くなった方の好物を煮ているのかと誘導されてしまう。「秋彼岸」はダメです!(とバッサリカット)
手羽を煮る 母よ厨の ちちろ虫
または、
手羽を煮る 母よ時雨の すぎる窓
など
「ちちろ虫」はコオロギのこと。
この直しが最適解という訳でなく、不要な言葉を取り除いたら、いろいろできるよ!という添削でした。
予選 第8位
名人7段 立川志らくさん
門付けの 母に背負われ 蚯蚓鳴く
「門付け」とは、家の前で芸を行い、祝儀をもらう芸人の事。
そして「蚯蚓鳴く」は、秋の静けさを表現した季語。
何が鳴いているかはわからないが「じ~……」と聞こえてくる音を、俳人たちが「みみずでも鳴いているんだろう」と季語にしたそうです。
夏井先生の評価
「門付けの母」と「蚯蚓鳴く」の取り合わせは良いと思います。ですが「背負われ」が、テーマに合わせて無理やり入れたように感じてしまう。「背負われ」なんて入れなくていい。
問題点はもうひとつ。門付けは昼間の出来事。しかし「蚯蚓鳴く」は夜の季語。時間軸をどう合わせていくか。
門付けの母よ 真昼を鳴く 蚯蚓
取り急ぎ、予選の結果速報でした!
夏井先生の評価は順次書いていきますので、少々お待ちくださいませ。
来週は3時間スペシャルで、俳句の決勝戦が行われます!楽しみにしましょう~(^^)/
プレバト俳句 2023年金秋戦決勝 お題「月」
いよいよ2023年金秋戦の決勝戦です!
季語は過去最高難度の「月」です!いったいどんな句が生まれるのでしょうか?
プレバト俳句 2023年金秋戦決勝 順位
決勝戦 第1位
特待生3級 森迫永依さん
朝月のアザーン 砂漠の空港へ
・アザーン:イスラム教における礼拝時間の呼びかけのこと
夏井先生の評価
※準備中
海外の光景を詠むことを海外詠と言います。
「朝月」で、有明の頃の細い月を想像しました。そこから「アザーン」という言葉で一気にイスラム圏へワープするわけです。
「アザーン」と「砂漠」がちょっと近いかもしれませんが、これはちゃんと読むと街の中のアザーンの声を耳の奥・胸の中に抱きながら、砂漠の中の空港へ向かって出発しようとしているので光景としてまったく齟齬(意見や事柄がくいちがって合わないこと)は無いわけです。
映像がしっかり描けています。
「この人だったのか、と嬉しい思いと、これからを期待したい思いがありますね」との夏井先生のお言葉でした!
まぐれではなく、勉強を積み重ね、実力をつけていいる森迫永依さん!
すばらしい結果でした!おめでとうございます!
森迫永依さんが最速でタイトル戦を制した回はコチラ
【プレバト俳句】冬のタイトル戦2023年「冬麗戦」の結果発表!
決勝戦 第2位
永世名人 FUJIWARA フジモンさん
月白の ワーディー渡る ヌーの群れ
・ワーディー:水の流れていない川の事
・月白:月が昇る時、空が明るく白んでいく様子
夏井先生の評価
「月白」が良かったですね。月が出る前の、空がほんのり明るい様子から、野営地を目指すヌーの群れが「ワーディー」という枯れた川を渡れば、砂埃も立つでしょうね。月白の色合い、枯れた川の色合い、ヌーの群れの色合い、それぞれが無彩色の濃淡の映像のようになっています。
印象的な陰影が生まれている。それがこの季語を選んだ一番良かった点ですね。
昨年秋の優勝者、フジモンさんが第2位!
この放送の直前に、接触事故を起こしてしまい、しばらく芸能活動休止となってしまいました……。とっても残念です。でもまずは事故にあわれた方、大事に至りませんように!
決勝戦 第3位
名人7段 森口瑤子さん
こりりと すっぱそうな 三日月のかど
梅沢さんから「月見て、すっぱそうなんて思いますか⁉」と強めに突っ込まれた森口瑤子さん。(梅沢さんは、自身の句で、同じように香りを切り取って詠んだのに、夏井先生に滅多切りにされたのでw)
夏井先生の評価
なかなか思いつかないからこそ、そこに詩があるんですね。ほんとにこんな句読んだの初めてです。
「こりり」から「すっぱそうな」と続くと、良い意味での違和感や意外性のようなものがあるんですね。ただ、これだけだと上滑りするかもしれない。
でも、上滑りしなかったのは最後「かど」というところに焦点を絞って着地しているからですね。(映像としてちゃんと押さえていることが大事)
しかも「かど」という表現は、作者の尖った心情に接点を持ちますので、そこも良かったと思います。
「もちろん、好き嫌いは分かれる句ですよ。「この句を嫌いな人がいる」ということに恐れるのではなく、自分の感覚を率直に書くと、絶対共感してくれる人は出てきますので、これからも自分の直感を信じて表現していってください。」と夏井先生からのメッセージでした!
決勝戦 第4位
永世名人 フルーツポンチ村上健志さん
良夜かな 香典返しの 茶漬け食ふ
夏井先生の評価
この句の中で議論すべき点は「かな」と「食ふ」。上五の「かな」というのはとても難しいんです。
「美しい月の夜だ」と詠嘆が先にくると、残りの中七下五とのバランスが取りにくいのですが、際どいところでバランスが取れています。バランスとって成功しているのは着地点の「食ふ」にあります。
この句の解釈ですが、同世代のお友達が亡くなったのかな、という場面を想像しました。つらい葬儀から日数が経って、少し悲しみも落ち着いてくる。香典返しのお茶漬けを「食べる」という行為で受け入れる。そのような表現が伝わります。
「食ふ」がいらないんじゃないか、という議論もありますが、その場合は「香典返しなる 茶漬け」などにしてもいいかもしれません。ただ「なる」に変えた場合、もらった茶漬けの箱を見ているだけの光景と読まれる可能性もある。ですのでここは「食ふ」が必要になってきます。
悲しみの日々から誰かの死を受け入れてやっと「物を食べる」ということ、日常が戻ってくるということが大事なんですね。
「読み終わった後、なかなか手練れの作品だな、と思いました。」と4位ながら直しなしとなりました!さすが村上さん!
「直しなし」と聞き「え!?これまでの4位で一番レベルが高い」と、いつもの村上節がでました(*‘∀‘)
決勝戦 第5位
特待生4級 春風亭昇吉さん
名月は東に 父島観測所
昇吉さんは気象予報士でもあるそうで(多才!)、父島の観測所に行った際、見渡す限りの水平線なので、陽が沈むと同時に、月の出も見られるその光景を詠んだそうです。
夏井先生の評価
兼題写真に真正面から取り組んでいる。「父島観測所」という固有名詞も効いていると思います。
気になるのは「名月」で良いのか?「名月」は、月を愛でる心に軸足がある。
しかし、昇吉さんの詠みたい光景を聞くと、気象予報士としての光景に心を打たれているのであれば、むしろ「まん丸の月が出てくる」という「月」自体に軸足を持って行く方が良いのでは?
\添削/
満月は東に 父島観測所
決勝戦 第6位
永世名人 キスマイ横尾渉さん
良夜のノーヒッター 肘の手術痕
夏井先生の評価
月の良い夜の勝利、月に向かって握りこぶしを上げるような光景も見えてきますね。題材も非常に面白い。では何がわずかな順位の違いかというと、必要な情報を十七音に詰め込みすぎたことで、季語がちょっと脇役に行ってしまった。だからといって、どの言葉も外せない。そのことによって、詩としての調べが窮屈になってしまった。
順位をつけなければいけないから、と夏井先生の添削でしたが、直すことも無く、この句はこの句として味わうのがよいとの結果でした!
決勝戦 第7位
永世名人 千原ジュニアさん
あんな家 二度と帰るか 睨む月
夏井先生の評価
上五中七で言葉を叩きつけてくるのは良いと思いますよ。あとは着地点ですね。
俳句は、ものを描写するのが定石とジュニアさんは分かっている。だから「月を睨んでいるんだよ、俺は」と、そのまま書いたと分かります。
ただこの句の場合は、月の映像よりは睨む行為の方が作者の言いたいこととして強くあるので「睨む月」より「月睨む」とした方が、ジュニアさんの詠みたい気持ちに合っている。
そしてもうひとつ「あんな家 二度と帰るか」がとても強いので、もうひと声やってもいいのかな、と思います。
あんな家 二度と帰るか 月に吼ゆ
決勝戦 第8位
特別永世名人 梅沢富美男さん
桂月や キャラメルの香の 満ち満ちて
・桂月:月の別称。また陰暦の8月のこと
夏井先生の評価
この句は頭の「桂月」悩んだんですよね。陰暦の8月という意味だと、案外悪くないんです。9月の涼しくなったころに、キャラメルのドリンクの香りを嗅いでいるような、悪くない取り合わせ。
ただ、お題が「月」なので『陰暦の8』ではなく『月』と詠んだんだろうと判断することになります。
そうなると「桂月」という季語を、中七下五で説明しているような一句になっていることになる。
\添削/
キャラメルの香か 桂月の甘からん
「どこからかキャラメルの香りがしてくる。もしかするとあの月の香りかもしれない」という、なんともロマンティックな直しになりました~
プレバト俳句最高位の梅沢さんが8位に撃沈……!
夏井先生からは「知識をひけらかしている句」と強烈なダメ出しも(/ω\)
夏秋連覇とはなりませんでした!
決勝戦 第9位
特待生3級 犬山紙子さん
別れるはずだったのに 月が綺麗
夏井先生の評価
夏目漱石が「I love you」を「月が綺麗ですね」と訳したことを取り込んだのは良かったと思いますよ。惜しいのは「のに」。「のに」は説明する言葉になってしまう。
別れるはずだった 月が綺麗だった
決勝戦 第10位
名人5段 皆藤愛子さん
細月を探す 三箇所 残り蚊に
夏井先生の評価
季重なりの「細月」が主役なのか「残り蚊」が主役なのか、はっきりしないことで損しましたね。
「細い月」とは言え、そんなに探すほどの時間が経つかな?という疑問を抱く人もいるかもしれないし。時間軸がブレるのがもったいなかった。
「残り蚊に刺された」を主役にした方が、句としては整いやすいですよ。
月を探す間を 残り蚊に刺されけり
取り急ぎ結果速報でした!
少しずつ解説もアップしていきます!
最後までお読みいただきありがとうございました~
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